オリジナルアパレルグッズ制作 ~小ロット(海外生産)を出来るだけ安く上げるコツ~
オリジナルでモノつくりを考えるとき、デザインや原料選択のほかに、「コスト」と「スケジュール」の概要確認が必要だと思います。
その際についてまわるのは「製造ロット」条件です。
請ける工場からすると、1型の発注数量が多いほど効率が良くなり利益が出るようになるため、製造ロットによって値段が変わるのは仕方が無いことです。工場に発注の打診をするとだいたい「何枚ですか?」「数量は?」と聞かれます。
問題になってくるのが「小ロットのモノつくり」です。
少ない数量で製造を依頼する時、「大幅なコストアップ」や「製造スケジュール長期化」を言われるのがほとんどですが、最悪は「出来ません!」と簡単に断られてしまいます。
そこで今回は、小ロット発注を上手く進めるための心掛けについて説明したいと思います。
※海外製造アパレルグッズの場合としてご覧ください
①小ロットに理解のある工場(メーカー)に依頼する
そもそも、小ロットを全く請けていない工場(メーカー)であれば、相談しても断られることが多いでしょう。
大規模工場で1ラインの人数が多く、生産キャパが大きければ、50~100枚などの小ロットを受け取ることは殆どありません。製造ラインの稼働効率を考えていることが多いので、まとまった数量で廻すことが当然必然なのです。
大規模工場でも、小ロットラインをを作って対応しているところは少なくないですが、その小ロットラインは取引額が多い客先から小ロット依頼があったときのために準備されているのです。太い客へのサービスのためです。
やはり、日常で普通に小ロットも請けている工場に交渉の余地があります。
そのような工場は小規模で少しコスト高めの製品を廻していることが多いです。
小ロットのライン組みに慣れているので、数量を伝えてみて二つ返事で断られることは少ないと思います。取引先の会社名やブランド名を教えてもらうことで、どのくらいのロットを廻しているのか想像がつきます。
お互いに歩み寄れる話がスタートするのではないでしょうか。
②生産投入時期への気遣い
工場には「繁忙期」があります。
売れる時期、人々が服を買い求める時期はだいたい同じです。その直前はオーダーが集中しています。工場のキャパが早めに埋まってしまいます。
「春夏物の立ち上がりの1月2月」「秋冬物の立ち上がりの8月9月」は混んでいて当たり前の時期なので依頼があるときは早めに工場に連絡が必要です。
その混んでいて当たり前の時期に、重なってくるのが中国の大型連休です。
「1月末~2月に春節」「10月初旬に国慶節」があります。
この期間は1週間~10日ほどお休みで動きません。そのため通常の量産期間よりも長めにスケジュール設定を考えなければなりません。
この期間に、突然、小ロット製造を入れることは非常に難しいです。
前もってその時期を避けて交渉を進めたほうが良いでしょう。
③小ロットで起こるロスへの気遣い
小ロットのコストアップとはどのような中身なのでしょうか。
・工賃アップ
数量が少ないので、加工賃が上がります。一般的なコストアップです。
多い数量の工賃と同じにはなりませんが、交渉の余地はあります。
「小ロットをまとめて型数投入する」「大ロットと抱き合わせで投入する」
「工場経営者に熱く語って納得してもらう」
少しでも安くしてもらうという交渉手段はあります。
・生地原料のロス《★重要》
衣料品製造に必要な「原料」「付属」これらにもコストアップの原因があります。
「原料」・・・布帛カットソーであれば「生地」、ニットであれば「糸」が原料として必要です。
生地の手配の単位は「反」ベースになります。生地の種類により違ってきますが、布帛は50m巻き、カットソーは70~80m巻きが一般的です。(中国の場合)
製品1枚の用尺が1mとしたら、30枚作りたい場合は30m必要です。
しかし、1反で手配された生地は、布帛だと20m残り、カットソーは40~50m残になります。これらの残った生地は捨てるしかないので、捨てるロス分の費用が製品単価にのってくるという訳です。
付属についても同様な状況になるものも多いです。「少なければ高くなる可能性」はついて回るのです。
ボタン、テープやゴム紐、織ネーム、洗濯ネーム類、これらのロスについてもミニマム数量を知っておく必要があるかもしれません。「日本手配して海外に支給する」ほうが安く上がることがあります。
生地については「出来るだけ取り切れるように展開型数を増やす」「次回の企画で使用する計画を立てて工場に保管してもらい使用」などでロスを防ぐことができます。
自分たち都合の発注数ではなく、工場手配の立場からロス軽減を考えたほうが、コスト減と工場コミュニケーションが上手くいくときがあります。
・運賃のロス
同じ1カートンに30枚入りと50枚入りでは1枚あたりで割り返し運賃は違いますよね。
一度に運ぶ単位が100カートンあれば、1ケースあたりの運賃も下がるでしょう。こちらでも大きい単位のものが安くなります。
運賃についても効率を考えて工夫が必要かもしれません。同じくらいの納期予定の小ロットが5型あれば、一緒に1回にまとめて発送したほうが、各々で5回発送するよりも安くなります。
輸送方法(※中国→日本の場合)は「シップ(貨物船)」「フェリー(文字通り人も乗る)」「エアー(航空便)」「クーリエ(国際宅配便)」「EMS(国際郵便)」などがあります。
大量に運べば運ぶほど安いのは「シップ(貨物船)」ですが、必ず安いわけではありません。シップで1カートンだけを送ると、手数料諸経費や日本に着いてからの配送費用が高いので割高になります。1~3カートンだと「クーリエ(国際宅配便)」のほうが安上がりになることが多いです。「EMS(国際郵便)」は少ない小口での運賃は一番安いですが、日数が多く掛かるデメリットがあります。時間に余裕があればクーリエよりEMSが安上がりです。
状況により、運賃も手段の選択が必要となってきます。
まとめ
そもそも小ロットの制作費用が高くなるのは仕方が無いことです。当然と言えば当然です。
海外製造だから小ロットに対して厳しいわけではありません。日本製造でも同じように値段は高くなります。
無茶な安い値段にすることは不可能ですが、「小ロットでも出来るだけ安価で提供したいという思い」「将来への取引の期待感」から少しでも安い値段で請けていきたいという想いは、他の製造協力社達に伝えることができます。共感を得ることができたらコスト交渉は始まります。
関わる業者の小さな協力の積み重ねでコストが少しづつ安価になっていくのです。
自分の想いや計画をまわりの人々に伝えていくことが交渉のスタートです!
